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東京高等裁判所 昭和58年(行コ)87号 判決 1984年7月18日

控訴人(原告) 松井つる 外二八名

被控訴人(被告) 建設大臣

主文

本件各控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。本件を東京地方裁判所へ差し戻す。訴訟費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、控訴人らの本件訴えは原告適格を欠き不適法であると判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほかは、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

一  原判決三三枚目裏九行目及び一〇行目の「環境保全に対する配慮については、その範囲、程度、方法等につき明文の規定はおかれていないから、」を「前記のように、法が法的保護の対象としているのは、専ら起業地内の土地等の所有者及び関係人の財産権ないし財産的利益であるから、」と改める。

二  同三四枚目表末行の「右の意見書の提出等は」から同裏四行目の「いうまでもない。」までを「法が右のような手続を設けている趣旨は、事業認定に関する法二〇条三号(「土地の適正且つ合理的な利用」)、四号(「公益上の必要」)の要件が抽象的な概念で定められており、その判断について一義的に明確な基準がなく、行政庁の広範な裁量の余地が存するところから、行政庁の右判断をできる限り公正妥当なものにするため、専門的学識経験者、利害関係人などの意見を参考にさせようとするものであつて、個々の利害関係人の受ける具体的な権利あるいは法的利益の侵害について、各個人の救済を図ることを目的として、個別的な防御の機会を与えようとするものではない。」と改める。

三  同三六枚目表七行目の「右公害発生のおそれが」を「右公害発生のおそれは、当該事業の内容、施行方法など、当該事業自体に起因するものであつて、」と改める。

よつて、控訴人らの本件訴えを却下した原判決は相当であるから、本件各控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 森綱郎 高橋正 小林克已)

当事者目録<省略>

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